Back HNext *日記に描いたエドロイ前提の生アル→ロイです。R15です。少し加筆してます。苦手な方はご注意下さい。す。ア
いつからここに立っているだろうか、思い出せない。 誰を待っているのだろうかと、自問自答しながら、頬を殴るように振り続ける雪を、ただじっと見詰めいていた。 既に肌は温度にな慣れてしまったのか、それ程寒さを感じなくなっていた。 ただ、足先だけが氷の様に冷え切っている。 肌を切るような冷たさの突風に、目を閉じて、開いた時、一瞬人影がロイの視界を掠めた。 見慣れた金糸長い髪と、そして、赤いコートを纏った姿。 ロイは寒さを凌ぐために深くかぶっていたコートのフードを脱いで、目を凝らして前方を見詰めた。 だが、そこに確かに見たと思った姿は無かった。 「………」 幻だったのか、と、自嘲気味に笑ってから俯いた。 「――大佐」 「!?」 突然声が掛かって、ロイは顔を上げた。 「どうも、アルフォンス・エルリックです」 「………ああ」 アルフォンス・エルリックがロイの目の前に立っていた。 アルフォンスが元の姿を取り戻した後、何度か彼の元を訪ねた。 そして、自らこの北方の任務をかって出て、一人でこの地に赴いてからも、過去、兄と共に旅した4年間の記憶を失ってしまったこの少年の事が気がかりで、何度かアルフォンスと親しいウインリイ・ロックベルに連絡を入れて、様子を伺ったりもしていたのだ。 だが。 「……どうしたんですか?」 「あ、いや…少々驚いてね、その身なりは…」 「今、この姿でいろいろな街を回って、兄の情報を集めているんですよ」 「………そうか」 ロイは吐き出すように言葉を返してから、 「とにかく、ここは冷える。中に入って話そう」 アルフォンスは頷いて、口元を上げて笑った。 アルフォンスは少し隙間風が入り込んできそうな程の荒い造りの兵舎を一様に見回してから、暖炉に火を入れているロイの姿を見詰めた。 マッチで火を点けようとして、失敗する。 その姿を見て、アルフォンスはロイの傍らまで歩み寄って膝を折った。 「あの…どのくらいあの場所に立ってたんですか?凍えきってるじゃないですか。それに…貴方の場合マッチは要らないんじゃ…」 アルフォンスの言葉を遮るように、ロイは話を変えた。 「それで、今日は何故ここに?」 「……報告に」 「報告?」 「はい。断片的にだけど…いろんな街を回ってるうちに、兄さんと旅をしていた時の事を思い出せたんです……本当に少しですが」 「そうか…!それはよかった」 そう言葉を返したが、アルフォンスの表情からはそれを手放しで喜んでいる様には見えなかった。 眉を潜めて、何かを思い悩んでいるような様子で口元を引き結んでいる。 「……貴方の事も、思い出せました。貴方が以前は大佐で、国家錬金術師で、そして貴方が兄さんを…軍の狗にした事も――」 「………」 アルフォンスの金色の瞳を真直ぐに受け止めながら、ロイは息を詰めた。 血を分けた別の個人だと頭では理解できる。 けれど、ロイが知る頃のエドワード・エルリックと同じ姿をして、同じ色の瞳で見上げられると、やはり胸が詰まる。 「思い出せるのは嬉しいんです…でも…辛い。嬉しいのと同じくらいに、苦しいんです」 「アルフォンス君…」 「兄さんがいないと、気付く時が、この世界のどこにも、いないと――…」 アルフォンスは言葉を詰まらせて目を伏せた。 鷲掴まれるような胸の痛みにロイは眉を潜めた。 この世界の何処にもいない。 知っていたけれど、認めたくない事実だった。 言葉にならないものが喉元までせり上がってくる。それを何度も飲み込んで、ロイは口唇を噛んだ。 「…アルフォンス君…」 「――僕を気にかけてくれる、貴方の事も、少しだけ思い出せたんです」 「…そうか」 「僕が今までで思い出せたのは、兄さんと、貴方の事だけですよ、大佐」 「――………」 ロイは顔を上げて、アルフォンスを見返した。 「私を――憎んでいたからか?」 「貴方が好きだったからです」 「………」 「兄さんと同じくらいに」 室内の空気が一瞬で張り詰める。 互いを映す瞳。静寂の下りた室内で、暖炉の火が爆ぜる度に音を立てていた。 「…君のその感情は、ただの勘違いに過ぎない、アルフォンス君。君は、ただ…鋼のと関わっていた私に…興味を持っているだけだ」 「何故、そんな風に決め付けるんです?」 「君が、まだ本当の恋や愛という想いすら知らない、子供だからだ」 ロイの言葉にアルフォンスの表情が変わる。 「僕は――!」 「…!」 伸ばされた両腕がロイの肩を強く掴んだ。 そのまま体重を掛けられ、不意をつかれたロイは、バランスを崩す。 折り重なって冷たい床に倒れこんだ。 アルフォンスはロイの上に跨ったままで、両手首を掴んで床に縫いとめるように押し付けた。 感情を昂ぶらせているアルフォンスとは対照的に、ロイは冷静なままでアルフォンスを見上げていた。 「……何の真似だ?手を離したまえ、アルフォンス君」 落ち着いたトーンの声がアルフォンスの気持ちを余計に逆撫でた。 「僕は…貴方の熱が知りたい……ずっと、知りたかったんだ。それを思い出したから、ここまで来たんです」 「――…」 アルフォンスはロイの軍服の襟に手を掛けた。 その手をロイが押さえ込んで、 「いいかげんにしたまえ、本当に…怒るぞ」 「兄さんとは、寝たくせに…!」 「――…」 「…知らないと思っていたんでしょう?貴方も…兄さんも…」 「アル…フォンス」 こめかみを打ち付ける鼓動が速くなる。 ロイが瞳を見開いて、一瞬全身から力を抜いた瞬間に、アルフォンスはロイの軍服の前を掴んで左右に開いた。 引きちぎられたボタンが床に転がる。 アルフォンスの瞳に、ロイの姿態が映った。 綺麗に筋肉のついた胸から、流れるようなラインの腰、引き締まった下腹を、ゆっくりと視線でなぞっていく。 「兄さんを…抱いたの?それとも…抱かせたの?どこに…どんな風に、触らせたんですか?」 すべらかな肌に指を這わせて、吸い付くような感触を確かめながら、胸のふくらみに触れようとした手を、もう一度ロイに掴まれた。 「……やめろ、アルフォンス」 痛みさえ覚えるほどの強い力だった。 ロイに本気で抵抗されたら、叶わないのは分かっていた。 けれど、その動きを封じ込める言葉を、アルフォンスは知っていた。 アルフォンスは目を閉じて、ロイの胸の顔を埋めながら、 「……僕が本当に欲しいのは、兄さんの体温かもしれない…昔みたいに、じゃれあって触れ合いながら眠ることが、やっと出来るようになったのに……二度とかなわないかも知れない……」 「……」 「寂しいんです」 呪文のように耳元に繰り返し囁く。 「僕は…恋しいんです」 卑怯者だと罵られようと構わない。 傷を暴いて、お互いがただ傷つけあうだけでも構わないと思った。 ロイの指先から力が抜けるのが分かる。 押さえ込む必要がないくらいに。 顔を背けて目を閉じているロイの胸元に口唇を這わせて、胸の突起を口に含む。 震えるように引き攣る腰を抱きしめながら、指先で熱を確かめる。 指で、舌先で、そして自分自身でロイの感触を確かめたかった。 眉を寄せて口唇を噛んでいるロイの横顔を見ながら、締め付けるような胸の痛みは強く頭を振って掻き消した。 兄が見たロイの表情、兄が聞いた声。 触れられて、かき回されて、上げるロイの声が聞きたかった。達する瞬間のロイの表情を、見たいと思った。 「どれだけ、僕がそれを願っていたか…教えてあげますから」 激しくなった雪と風が窓ガラスを殴る音が響く部屋。 爆ぜる暖炉の火の音を聞きながら、この部屋はこんなにも寒々しかっただろうか、とロイは頭の中でそんな事を考えていた。 「…声くらい、出してください」 ロイの両足を開かせて、その狭間に細い腰を割り込ませている、まだ幼ささえ残る面差しをしたアルフォンスの目を見上げる。 「……悪いが、演技までしてやれる気持ちにはなれないな」 ロイの言葉に、アルフォンスは言葉を詰まらせた。頬を染めて、眉を寄せる。 十分だといえない愛撫を与えただけの場所に、強引に自分自身を押し込んで、あれほどに焦がれたロイ・マスタングを組みしいて、そして、その体温を肌で感じることが出来た。 熱くて、狭い内に絞り込まれ、初めて知る快楽に、入り込んだ瞬間にアルフォンスは達しそうになった。 それを必死に堪えて、腰を強く抱き寄せながら、何度も繰り返しロイの内を確かめるように擦り上げた。 夢中だった。 背骨を灼かれる程の快楽に喘ぎながら、夢中で貪り、そして息を吐いて目を開いた時、ロイの冷え切ったままの黒瞳が映った。 瞬間、冷水を浴びせられた様に、熱が冷えた。 奥歯を噛んで、込み上げてくるもの、必死で押さえ込んで、アルフォンスは目を閉じる。 兄と抱き合ったていた時に見た表情が見たくて、声が聞きたかった。 叶わない事だと、身をもって教えられている様で、アルフォンスは酷い焦燥感に苛まれた。 開かせた両足を抱え上げてのしかかるようにしながら、折り曲げる。 「っ……!」 先刻よりも深くなった挿入に、苦痛を覚えたのか、ロイが眉を寄せて低く呻いた。 そのままの体勢で、動きを繰り返す。 「…い…あ…う…っ」 きつく目を閉じて、苦痛に耐える表情を眼下に見ながら、アルフォンスは突き上げるような震えを覚えて、目を閉じる。 深々とアルフォンスを受け入れて、眉を寄せて耐える表情。 アルフォンスは、速い息を吐きながら、ひっそりと口元に笑みを称えた。 「……兄さん、貴方のそんな顔…きっと知らないんでしょうね」 「……」 アルフォンスの言葉に、ロイが目を開いた。 視線が交わる。 「……こんな事がしたかった…のか?」 問いかけられて、アルフォンスは動きを止めた。 胸に突き刺さるよなロイの詰問に、答えを頭が必死に探す。 『違う』と――答えはすぐに見つかった。 ロイの切れ上がった黒い隻眼。その目に睨み上げられて、アルフォンスの心は、ひるんだ。 けれど、もう抑えがきかなかった。 繋がった場所を確かめるようにロイの体を折り曲げながら、アルフォンスは一度引き抜いた高ぶりを、もう一度ねじ込む。 「…あ、あ!」 ロイの四肢が引き攣るように震えて、その小刻みな震えが、アルフォンスの快楽を煽る。 「大佐…大佐…」 最奥を確かめるように腰を抱き寄せる。 「あ、ああ……っ」 痛みに仰け反る体を上から押さえ込む。 何を、どうしたいのか分からない。 ただ分かるのは、頭の芯から突き抜けるような、この快楽だけだった。 夢中で腰を打ちつけながら、うっすらと目を開いて、されるがままに揺さぶられているロイを見下ろす。 顔を背けて、苦痛に耐える表情。 見たかったのは、別のものだ。 けれど、それでも構わないと思った。 全て知る事は叶わないと、知っているのだから。 最初から。 だから今は、この熱を知るだけでいい。 アルフォンスはそう自身に言い聞かせながら、強く突き上げて、そして、身を深く沈みこませた。 Back Next |