司令部の仮眠室のベッドにロイを寝かせてから、ヒューズは愚痴をこぼす。
「それにしても、なんで俺がこっちに来てる時に体調崩すかな・・・」
「・・・お前の顔を見たら、急に具合が悪くなったのだ」
ロイが言い返した言葉にヒューズは眉を寄せて、
「何だ、それは!俺のせいにする気か?大体、普段の生活に問題があるんじゃないか?今日だってたまたま俺がいたから良かったものの・・・・こんな時世話してくれる人間が、お前さん、ちゃんといるのか?だから、俺はいつも早く嫁さんを貰えっていってるだろうが」
ロイは両手で耳を塞いで目を閉じた。
「もういい、今度、また聞くから・・・」
身じろいで、息を吐き、大きく数回上下するロイの胸を見て、ヒューズも息をついた。
枕もとに用意していた水で冷やしたタオルをロイの額にかけてやる。

「体温計れたか。見せてみろ」
ヒューズはロイの開いたシャツの胸元に手を差し入れた。
指先に触れる熱い肌。体温計を見なくても熱がかなり高いのが分かった。
シャツの下の肌は汗でしっとりと濡れている。
「・・・・・ヒューズ?」
ヒューズは、問い掛けるロイの熱にうるんだ目を見返しながら、動かなかった。
「・・・・・」
「な、んだ?」
「・・・ちゃんと計れてるのか〜?」
体温計を抜き取って、ヒューズはメモリを見た。
「・・・とにかく、解熱剤を飲まんとな、もらってくる。寝てろよ」
ヒューズはそういって、上掛けを肩の上まで掛けなおしてやってから、踵を返した。
「ヒューズ」
「ん?何だ?」
「・・・・・・・すまんな」
「構わね〜よ、このくらい」
背中を向けたまま、手をひらひらと振って仮眠室を出て行こうとするヒューズを、ロイは口元を少し上げて笑いながら、見送る。
「けど・・・まあ・・・とにかく・・・俺が来てる時で良かったよ」
「・・・」
「戻るまでに寝てろよ」
ヒューズは仮眠室を出て行く。
バタン
普段、ロイにはゆっくりと、深く眠る事の出来ないベッドなのに、妙に心が落ち着く・・・・こんな安心感を覚えたのは、どのくらいぶりだったろうか・・・と、考えながら、ロイは目を閉じ、そして眠りに落ちていった。

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