Back    Next    **CP注意。無理矢理など苦手な方はご注意下さい。


    ***

「う……」
一瞬の隙をついてロイの口腔に割り込んできたキンブリーの舌が逃れるロイの舌を追って、絡め取る。
貪るようなそれに、息が詰まる。
顔を背けたくてもキンブリーに前髪を掴まれ、がっしりと押さえ込まれてロイは身動きが取れなかった。

絡め取られて、強弱をつけながら吸われ、ぞくりとせり上がる波に腰が砕けそうになる。
「…ん…う…」
音をたてて、何度も吸われた。
長い口づけに、耐え切れず眉を寄せて身じろいだが、ロイを捉えるキンブリーの力は、五指が肌に食い込むかと思う程の強さだった。
逃れる事を許されずに、溢れそうになる互いの唾液を飲み込まされる。
溢れたものが互いに合わさった口唇の端から溢れて、ロイの頬から、喉元を伝って流れ落ちた。

「………」
満足した表情でキンブリーは腕の中に捉えた獲物を見遣った。ゆっくりと口唇を解放しながら、酷薄に笑う。

解放された安堵から、ロイが緊張を解いた瞬間、キンブリーはいまだロイに銜えこませたままであったものを、ひといきに引き抜いた。
「――っ…!!」
かき出すように引き出される。
痛みにロイは呻いて眉を寄せた。
キンブリーがロイの中に吐き出したものの後が滴り、土の上に幾つもの染みを作った。





    ***

ロイにとっては全てがただ、耐えるだけの時間だった。

荒んだ心でこの廃墟に来た時、罰を与えてくれるものを、どこかで求めていたのは確かだった。
そんな心の隙を作り、ここでそれを見せた自分が悪いのだと――その場にヒューズが現れ、更に窮境に置かれる事になったが、それはキンブリーが意図した事ではない。
言葉で追い詰められながら、手酷く扱われた事に文句も言えず、ロイはただ俯いて奥歯を噛んだ。


体を支える為についた手が乱れ落ちている軍服に触れた。
キンブリーがロイの内に放ったものが身動きした瞬間に溢れて太腿を伝って流れ落ちていく。
その感触が妙にはっきりと分かって、ロイは湧き上がってくる嫌悪感に耐えるように、指に触れた軍服の裾を握り締めた。


「さて…と」
キンブリーはゆっくりと立ち上がって、少しだけ乱れていた自分の衣服を整える。
襟元まできっちりとただしてから、
「思ったより遊びに時間をとられてしまいましたね。これでは、仕事に遅れてしまう。私としたことが――」
その場でキンブリーはロイを見下ろした。
少し項垂れたロイの姿を見て、うっすらと口元を吊り上げる。
「マスタング少佐、貴方も急いだ方がいいのではないですか?」

「――…」

「…もしや、動けないのですか?それは――失礼しました」
「……」
「よければ、手を貸しましょうか?」
キンブリーは可笑しげに喉を鳴らした。

俯いていたロイが顔を上げて、キンブリーをきつく睨んだ。

    ***

自分が受けたダメージを相手に知られたくなくて、ロイは軋むような体を無理矢理動かした。
手に触れていた上着を引き寄せる。何気ないその動作でさえ、今のロイには億劫だった。




きつく奥歯を噛んだままで、必死に体裁を保とうとしているロイの姿を上から楽しげに見下ろしていたキンブリーは、ロイのまだ身支度の整わない姿をゆっくりと楽しむ事にした。

這わせるようにゆっくりと、ロイの肌に視線を落とす。

強く吸い上げた口唇から――首筋、胸元から、引き締まった下腹を通って、そして、まだ濡れたままの場所。

召集の鐘に呼び出されなければ、ロイの見せた弱みをちらつかせながら、何時間でも好きに弄んで、思う様泣かせ、何も考えられなくしてあげていたのに――と口惜しく思いながら、キンブリーは口元を吊り上げる。

何の事も。そして、誰の事も――。

ロイの乱れたままの姿を見ているうち、まだ燻ったままの熱が再び高まる。
キンブリーは腕を伸ばしてロイの腕を掴んだ。
両腕を捉えて胸元に強く引き込む。
グイ
「っ……!い…
…」

急に立ち上がらされて、ロイは走る痛みに声を上げた。
「な…ん……」
息を吐いて呼吸を整えてから、ロイは責める様な、問いかける様な目で、キンブリーを見上げた。


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20061209

                      戦地で   #2 キンブリーの思惑 C (ヒューロイ前提キン→ロイ) R16