Back    Next    


    ***

襲撃を警戒しながら、ヒューズは音がした方向――ほとんど崩れ、積まれた石壁の残骸の残る場所へと歩を進める。


近づいてくる足音を耳にしながら、ロイは動く事が出来なかった。
ただ激しさを増した突き上げに耐えて、声を堪える事しか出来ない。

キンブリーが口にした通り、ロイ自身がどこかで望んだ事だった。
ただ、しでかした事の重さを受け止めきれずに、抱えきれないものを吐き出す場所を求めたのだ。だが、自身で招いた窮境とはいえ、流石に後悔せざるをえない。

キンブリーに組み敷かれている今の自分をヒューズにどう説明すればいいのか、と、ロイはこの先起こり得る最悪の事態を想定して考えを巡らせる。

「……っ…!」
容赦の無いキンブリーの押し引きに、無理矢理思考を何度も中断させられた。
背中に回っている両手首は擦れて痛み、噛み締めた口唇は血の味がする。
今更押し退けてキンブリーを殴ったとしても、その音でヒューズはこちらに気付いてしまうだろう。

ザツ

ヒューズは一度足を止めて、胸元に忍ばせたものに手を添えたまま、問いかけた。





「誰だ…出て来い」
「……!」


絶対に見つかってしまう――と、ロイが息を詰めて、ヒューズの次の行動を待っていた時、野営地の空の方角から、作戦開始の兵の召集合図の鐘が鳴った。



    
***

鐘の音にヒューズは立ち止まった。
作戦開始を知らせる音。その音が野営地に響くと、兵士は直ぐに命じられた場所に移動しなければならない決まりになっていた。
「……お呼びか……」
ヒューズはその場に立ち止まったままで、先刻程壁が崩れる音が聞こえた方向をもう一度見つめた。
声をかけたが、誰も出てくる気配は無い。
敵が潜んでいるならば、とっくに攻撃を仕掛けてきている筈だ。そのくらいの距離まで近づいた。
「……」
ザッ
ヒューズはまだ後ろ髪を引かれる思いを抱えながらも、踵を返した。




息を潜めるようにヒューズの動向をうかがっていたロイは、砂を踏む足音が遠ざかるのを知って、安堵の息を漏らした。
ロイの表情を上から眺めていたキンブリーは、一瞬気の緩んだロイの脚を抱え上げ更に深々と押し入る。
「……ッ……!」
荒い呼吸を繰り返しながら、ロイは漏れそうになる声を飲み込む。
逃れるようにずりあがるロイの体を押さえ込んで、キンブリーが耳元で囁いた。
「もう少し遊んであげたかったですが…仕事の時間のようですよ。私達も行かなければ」
「…ッ…く…」
引き攣るように揺れる体に刺激されて、キンブリーは悦に入った表情を面に浮かべた。

キンブリーはロイの耳元に唇を寄せて、舐めまわし、舌を差し入れて愛撫しながら、呼吸を抑えながら囁いた。

「――出しますよ」


    ***



「――っ…!!」
両脚を抱え上げられて左右に大きく割り開かれた不安定な体勢のまま、何度も突き上げられる。
「…う…っ…っ…」
足を突っ張らせて閉じることも出来ずに、ロイはただキンブリーの刻むリズムに揺さぶられた。
腰を打ち付ける動きが更に速まって、体重を上から掛けられる。相手の侵入を拒めない体勢のまま、最奥まで深く受け入れさせられた。
「――っ……ぁ……っ…!」
そのままで、キンブリーが動きを止める。

朦朧としながら目を開けると、ロイの双眸にキンブリーのうっすらと上げられた口元が映る。

「――まだ…ですよ、まだ……全部貴方に注ぐまでね」
「……い……」
ゆっくりとした動きを繰り返しながらキンブリーが耳元で囁いた。
その場所に溢れてくるような熱を感じる。嫌悪感と、込み上げてくる嘔吐感にロイは眉を寄せた。

ロイは滲む程に口唇を噛み締めて早い呼吸を繰り返す。その様を見下ろしていたキンブリーがいきなり動いた。
ロイの前髪を鷲掴んで上向かせ、強引に開かせた口唇を塞ぐ。
「――!?」
一瞬だけ気を抜いていたロイは、不意をつかれて両目を見開いた。

Back    Next
20060914

                      戦地で   #2 キンブリーの思惑 B (ヒューロイ前提キン→ロイ) R16