Back    Next    **イシュヴァール妄想です。CP注意。無理矢理など苦手な方はご注意下さい。


    ***

立っているだけで、背中に流れるような汗が浮くのは、この場所の気温のせいだけではなかった。
よろめくように数歩歩いて、崩れかけた石造りの壁に身を預けて、ロイは空を仰いだ。
自分の体に染み付いた様な、硝煙と、そして蛋白質が燃えた時に発する異臭。
慣れたつもりでいたのに、ふとした拍子に限界点を超える。
こみ上げる吐き気を堪えながら、目を閉じて荒い呼吸を繰り返す。
許される範囲の距離だけ戦地から離れて、殺戮を繰り返す事を、納得させる理由を頭の中で探しながら。

「何をしてるんですか?」
ふいに背後から声を掛けられて、ロイは弾かれたように振り返った。
「…キンブリー…」
視界に映った男を認めるなり、ロイは眉間に深い皺を寄せる。
ゾルフ・J・キンブリー。
国家錬金術師で、「紅蓮の錬金術師」の名を持つ男だった。
上層部はこのキンブリーという男をかっているようだったが、ロイは初めて会った時から、この男が苦手だった。
鋭く全てを見透かすような目の奥に、どこかぞっとするような光を宿している。
その表からは、何を考えているか全く分からない。
ロイはそういう相手が苦手だった。
「……そんな目をして…また沢山、燃やしてきたんですね?」
「――…」
体裁を取り繕って言葉を返す気力は、今のロイには無かった。




「傷ついた目をしていますね。もっと―傷つけばいい。もっと傷ついていく貴方を見たい」
「――!」
ロイのきつい視線を受け止めて、キンブリーは唇の端をゆるりと吊り上げた。
「…お前は…おかしい…」
「…ふ。そうですか?でも…私をこんな風にするのは、貴方の方にも責任があるんですよ、マスタング少佐」
「何…」
「私はね、本当はこの戦争も、別にどうでもよかったんです。ただの仕事だと思ってた、面白くも無い、ね。でも――…ここで貴方と会ってから…いろいろと考えが変わったんです」
ロイは憮然としたままキンブリーの言葉を聞いていたが、言葉の中の含んだ意味を探る気力も今は無かった。
どうでもいい、そんな気持ちだった。
キンブリーからふい、と目を反らして目を閉じると、いきなりコートのフードを鷲掴まれて引き寄せられ、口唇を塞がれた。
「――!?」
「……血の味がしますね」
「……」
「抵抗しない貴方というのも、堪らないんですよ。だから、もっと傷ついた貴方が見たい、あの時みたいに…」
「――!」
「また、慰めてあげますよ、何度でも。どうにもならなくなって、最初に助けを求めたのは貴方の方だって事、忘れないで下さい」
「……忘れたな」
「そうですか?では思い出させてあげましょうか?」
「っ…」
コートを掴んでいた手を離して、キンブリーはその手をロイの両脚の間に割り込ませて、中心をゆるりと擦り上げた。
「…や、めろ」
「…何度も、私に揉まれて、吸われて…私の手や、口の中で何度も…」
「やめろ!」
キンブリーの手を振り払って、ロイは両手で押し退けた。
身を交わして砂を踏んで距離を置こうとしたとき、
「……そういえば…この頃、頼ってくれなくなりましたね…あの男と、ここで会ってから、ですよねぇ?」
「……」
「ヒューズ……大尉でしたっけ」
ロイは答えずに、まとわりつく視線を無視して歩を進めた。
「…前線での誤爆というのは、無いことじゃないですよねぇ…」
独り言の様に続けているキンブリーの言葉を咄嗟に理解できずに、ロイはそのまま数歩距離を進めてから、足を止めてもう一度キンブリーを振り返った。
「…何を…言ってる?」
「だから、貴方を傷つけたいって話ですよ」



    
***

キンブリーは崩れた瓦礫を避けて、細かい砂の上にロイの背中を押し付けた。

こんな場所で正気なのだろうか――と思ったが、ロイはさしたる抵抗もしなかった。
どこか投げやりな気分だった。
ロイは自分を組み敷いている男を見上げる。この場所に来るまでは、知らなかった顔だ。
今も、キンブリーという男の事をよく知っているわけではない。ただ、精神がバランスを崩してどうにも安定を保てなくなった時、取り敢えず近くにいたのがこの男だった、というだけだった。
それが始まりで――その後に何度か、この面識もほとんどない男に救いを求めたのは事実だった。
救い、というよりもただ…壊したかったのだ。自棄になっていた。

キンブリーはロイを傷つけたいと言った。
好意を持たれていないとは思っていたが、憎まれていると知ったのは今日が初めてだった。
けれど、今のロイには都合が良かった。
何か罰を受けたい気分だったからだ。

白いシャツの前をはだけられて、ロイは一瞬だけ身を硬くした。
キンブリーは口元を吊り上げて、ロイの瞳を自身の瞳に映したままで、焦れる程にゆっくりと、シャツのボタンを外していった。
「誰か来るかも知れませんね……そういえば、ヒューズ大尉もあなたを探してたようですよ」
「――!」
どこか虚ろだったロイの瞳が光を取り戻す。その一瞬の変化を見て取ったキンブリーは少しだけ眉を顰めた。
ロイはキンブリーの胸を押し退けて、
「…戻るから、退けろ」
「――嘘ですよ。こんな所まで探しに来るわけないでしょう」
「……」
キンブリーはロイのシャツを下ろして、それを剥ぎ取った。
俯いてキンブリーの言葉の真偽を考えていたロイの手首を取って、後ろ手にシャツを巻きつけて縛り上げた。
「――!?何を…」
「軽く縛っただけですよ、面倒ですから」
目を見開いて自分を見上げているロイを無視して、キンブリーはロイのズボンの前に手を掛ける。
「……待……」
中心をやんわりと握りこまれて、ロイは言葉を詰めた。
擦りあげるように、布の上から何度も揉まれる。
「……う…」
「……こうして、この上からでも分かりますよ。反応が本当に早いですねぇ」
「………!」
口唇をきつく噛んで、頬を朱に染めて顔を反らすロイを眺めながら、キンブリーは口の端を上げた。
「私もですから…ほら」
キンブリーは自身をロイの前に押し付ける。
「……っ…」
「さっさと済ませましょう。貴方も…本当は欲しいんでしょう?」
「何だと」
「別に、おかしな事じゃない。こういった場所で…大きな戦いの後なんかは……本能ですよ」
「……

キンブリーはロイの膝に手を掛けて大きく開かせ、その間に身を沈めた。
ロイの前を開いて腰を抱え上げ、少しだけ下を脱がせた。
その場所だけが空気に晒され、ロイは恥ずかしさに頭を振って身じろぐ。その場所に高ぶりが押し付けられるのを感じて、怖気が走った。
「……や…」
「今更でしょう。貴方が誘ったんですよ」
「な――!?」
抵抗の言葉はキンブリーの手の平によって封じられた。






    ***

@ヒューズ「ロイ、何処いったんだ。ったく…一人で行動するなって言っといたのに…」





Aキンブリー「おや?あれは…噂をすれば…というやつですかね」
ロイ「!?」


Bキンブリー「どうします?声を出して呼んでみますか?」



@ロイ(ぷい)
Aキンブリー「……」











Bキンブリー「…そうですか。では、遠慮なく、続けさせてもらいますね」

Cロイ「――っ…!…」
キンブリー「……ふ」
ロイ「っ…あ…あ!」
キンブリー「―あ、もうそこまで来てるみたいですよ…」

ロイ「――!?」

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20060610(20060614一部修正)
いつもながらタイトルに悩みまくって、結局ノックス医師の…に合わせました。辞書で思惑をひいたところ、考え、意図、のほかに『コイゴコロ、意中の人』という意味が…タイトルはキンブリーの意中の人、ということでお願いします……

                      戦地で   #2 キンブリーの思惑  (ヒューロイ前提キン→ロイ) R16