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白い絨毯の様に花びらが降り積もった土の上に、二人は背中合わせで腰を掛ける。
「いい天気だな〜おい」

長かった士官学校での4年間も、今日で終わりだ。

式も、とどこおりなくすんだ。
後は、配属先が決まるまで待機して待ち、そして、通知が来れば、その日から軍属になる。

訓練や、士官になるための勉強をしながら、それでもやはり、どこか学生だという自由さと、気安さがあったのは事実だ。

それも今日で終る。

「雨になると言っていたが、予報が外れたな」

「士官学校を主席で卒業ってな、どんな気分だ?今日の式での挨拶も、良かったぞ。教官も、鼻が高そうだったぞ」

ロイからの返答はない。いつもの事だ。気にもせずに、ヒューズは、晴れ渡る青空と、薄紅色の桜の花を見上げた。

「・・・桜と、青い空って合うな。年に一度、短い間だけ咲く花・・・・綺麗だよな」

「・・・・・・おい、ロイ・・なんで黙り込んでるんだ?」

「・・・・」

ヒューズはロイの横顔を覗き込んで、言葉を詰めた。

「・・・相変わらず、よく喋るな、お前は。いつもより饒舌なくらいだぞ。嬉しいのは分かるが・・・」

「嬉しい気持ちより、正直寂しいな」

「・・・・・・・・・・・・・・」

ロイは眉を寄せてから、そして、息をふき出して笑った。

「ま、これでお別れって奴もいるが、俺とお前さんは別に、これでさよならってワケじゃない。ま・・・・今までの様に寝る時も一緒ってワケにはいかないだろうがな」

「当たり前だ」

即座に冷たく返されて、ヒューズは声をたてて笑った。

「・・・ヒューズ」

「なんだ?」

「・・・お前と、同期だったのは・・私にとって・・・・幸運な事だった」

もっと別の言い方で、表現したかったのに。
相変わらず自分の思う事の半分も言葉に出来ない自分を口惜しく思いながら、ロイは口元を引き結んだ。

「――俺もだ。楽しかったな」

「・・・・ああ」

肩や、組んだ腕に降り積もる桜の花をそのままに、そうして互いに同じ事を願いながら、桜と青い空を見上げた。


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